新たな章のはじまり

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AI活用によるスチュワードシップ活動の高度化

日本のコーポレートガバナンス・スチュワードシップの充実に向けたAI活用
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13:26

Double Quotes
正直、生成AIがここまでしっかり判定してくれるのかなというのは半信半疑でした。それを見事にそういうシステム環境を構築して、しっかりと判定するようなことをやっていただいたのは、本当に驚きました。
石井 智親、日本生命保険相互会社、株式部担当部長、CFA協会認定証券アナリスト

生成AIは、機関投資家のスチュワードシップやコ ーポレートガバナンスの取り組み方を変えつつある。日本生命では、生成AIを活用して700社超の投資先に 対するスチュワードシップ・エンゲージメントの品 質や効果を分析している。投資先との対話の品質を 分析することで、時間をかけて企業の行動に実質的 な変化をもたらす取り組みを進めている。

今回の対談で、オリバー・ワイマンのパートナー・関岡泰之が、日本生命保険相互会社株式部担当部長         (CFA協会認定証券アナリスト)の石井智親氏を迎えて、スチュワードシップ活動における対話の品質 を向上させる上で、AI技術がどのように役立つかについて探った。

INFocusシリーズ

INFocusは、アジア太平洋地域の専門家やリーダー からの独占的な洞察とトレンドを提供し、この地域 の未来を形作る力、機会、課題を探る。

シリーズ(英語)

関岡 泰之

皆さん、こんにちは。 オリバー・ワイマン東京オフィスのパートナー関岡です。 

本日は、日本生命さんの株式部、石井智親様をお迎えいたしまして、日本生命さんのスチュワー ドシップ活動についてお話をお伺いしたいと思います。その中で、弊社のご支援についても触れ ていただければと思います。それでは石井さん、よろしくお願いいたします。 

石井 智親

こちらこそお招きいただきましてありがとうございます。日本生命の約10年超にわたるスチュワ ードシップ活動についてご説明させていただけること、大変ありがたく思います。 

関岡 泰之

石井さん、今日はよろしくお願いいたします。

石井 智親

よろしくお願いします。

関岡 泰之

それではまず、日本生命さんが過去10年超にわたって、スチュワードシップ活動についてどの ような取り組みをされてこられたか、特に、環境変化があった中でどのような対応をされてき たかについて、お伺いしたいと思います。

石井 智親

ここ10年で、日本では経済成長に向けて企業のガバナンス改革が進められてきました。2014年に機関投資家向けのスチュワードシップ・コード、そして、その翌年には企業向けのコ ーポレートガバナンス・コード、これを車の両輪として企業のガバナンス改革は着実に進んで きたと思います。

こうした環境下で、我々も責任ある機関投資家として、2014年にスチュワードシップ・コード の受け入れを表明しまして、体制を強化しながら対話の質や量の強化に努めてまいりました。具体的に申し上げますと、対話の量につきましては、現在年間約700社の全国の企業と対話をし ておりまして、おそらく活動量としては日本最大級だと考えています。

また、対話のテーマも徐々に拡大してきました。具体的には、我々、当初ガバナンスやファイ ナンスのテーマが多かったのですが、2018年頃から環境や社会といったテーマについても徐々 に拡大していったということです。

我々の目指すところとして、「有益な対話相手として選ばれる機関投資家になりたい」というこ とを掲げています。そうした中で、我々は多くの企業と対話をしてその知見を蓄積し、そしてそ れを対話のクオリティに活かしていく。こうしたことで、活動を今後も進化させていければと考 えております。

関岡 泰之

ありがとうございました。日本生命さんがこれまで過去10年超にわたってスチュワードシップに 取り組んでこられました内容がよくわかりました。

今回のオリバー・ワイマンとのプロジェクトでは、日本生命さんが過去対話を続けてきた10年超にわた るミーティングの記録を分析させていただきまして、日本生命の皆様が本当に品質の高い対話ができて いるかどうか、それが投資先の企業の皆様にとってし っかりと受け止められ ているかどうか、またその 対話を踏まえ、投資先の企業の皆様が実際行動変 容を起こして、それが実際に外から確認できる形で変 化として起こっているのかどうか、こういうことを分析して確認をしていきたいという形でお手伝いを させていただきました。

できるだけ客観的な分析 をするという目的を掲げま して、今回生成AIを使い、生成AIにまず日本生命さ んの投資の哲学をしっか り学ばせる。次に、どういう対話がより品質の高い対話であるかどうか、それを学習させる。それで対 話記録を全て読み込ま せて、果たしてその対話が品質が高いかどうか、インパクトを生んでいるかどうか、こういうことを 分析をするというお手伝いをさせていただきました。

今回、プロジェクトを組むにあ たって、オリバー・ワイマンに期待した点がもしございましたら、お聞かせいただけますでしょうか。

石井 智親

オリバー・ワイマンを今回のプロジェクトのパー トナーにしたのは、3つ理由があると思っています。

1点目は、オリバー・ワイマンとは、過去に直近2年 スチュワードシップ領域のプロジェクトを一緒 にさせていただきまして、我々の活動内容や考え方、こういったものを深く理解いただいていたとい うことです。

2点目は、私の目指すゴールやレベル感といったも のを、このプロジェクトの構想前の段階から共有で きていたなということを感じたことです。

3点目は、このプロジェクト、本当に我々にとっても チャレンジングな取り組みだったということで、おそらくきっと何度も壁にぶち当たるだろうなと思っていました。そういった中で、オリバー・ワイマン にはおそらく適切な有益なソリューションを提供いただけるのではないかという期待があった。その3つ が理由でございます。

今回、まさにそういう期待に応えていただいた。い や、 むしろ期待を超えていただいた事例が2つある か なと思っていますので、それを紹介したいと思います。

1点目が、先程、関岡さんもおっしゃってい ました、対話のクオリティの分析。これが最も時間をかけた ところになります。この作業は何かというと、生成 AIに効果的な対話は何かというのを、我々の方で定 義をしまして、それを生成AIに学習・指示をさせ ることで、我々の対話記録8,830件について、適切に 対話のクオリティを判定させる作業です。ですので、学習やプロンプトがとても重要になるのですが、最 初300件のサンプルを用いて、トライ・アンド・エラー を行いました。トライ・アンド・エラーをやると、生成AIというのは、文脈 を理解する力にとても優れて いる一方で、それが逆に我々の発言内容を良いよう に解釈して しまう、ということもありまして、こうい ったものをサンプルチェックの段階 で除くなどの 作業を行いました。最終的には、プロンプトの内容がA4紙 で大体10枚ぐら いの分量になりま した。その時もオ リバー・ワイマン様にはとても有益なソリューション を提供いただけたと 考えています。

2点目は、企業の行動変容を生成AIに判定させるという作業についてです。手順としては簡単に見えるかも しれないですが、我々、投資先企業に様々なことを要望しています。例えば、財務面の定量的な要望です とか、もしくは、開示充実といった定性的な要望、このような色々なものを要望しています。そうした中 で、これをシステムでどうやるのかというところで、生成AIに1万件を超える要望事項を着実に読み取らせ て、それを定量または定性に分類して、定量面では財務データ、定性面では有価証券報告書や統合報告書と いったディスクロージャー資料、これを予めシステム環境の中に格納しておくことで、要望事項とそのシス テムのデータと突合し、資料や財務データの変化を生成AIに判定させています。オリバー・ワイマンにこう いうことをやってくださいと提案しましたが、正直、生成AIがここまでしっかり判定してくれるのかな、と いうのは半信半疑でした。それを見事にそういうシステム環境を構築して、しっかりと判定するようなこと をやっていただいたのは本当に驚きました。ありがとうございました。 

関岡 泰之

今回のプロジェクトを通じて、今までの日本生命さんにおけるスチュワードシップ活動、過去10年超に わたってやってこられたわけですが、何か新たな気づきとか新しい発見とか、そういうものがありまし たらお聞かせ願えますでしょうか。

石井 智親

今回の分析で、対話のクオリティとか企業の反応といったものが、良かったと判定された割合が年々高 まっていたのは良かったと考えています。

ただ、想定していたことではありましたが、テーマごとに差がありまして、例えば財務面のテーマの 対話ですと、相対的に「High」 「良かった」 「効果的だった」 という割合が高くて、環境や社会と いったテーマは相対的に低かったです。我々、対話担当者が年間約100件弱の企業を担当しています。そうした中で、効果的な対話の割合を今後上げていくために、どのような活動のあり方を模索してい くべきかということは、今後検討していく必要があるなということを感じました。

また、企業の行動変容については、企業の行動変容があったという割合は年々増えていっているとい う結果が出ています。ただ、これは我々の対話の効果だけであるということを主張するものではなく、おそらく企業は様々な影響を受けています。例えば政策、他の機関投資家からの要望、企業の自助努 力など、様々な影響を受けている中で、我々の要望事項と企業の行動変容の方向性が概ね一致した結 果と捉えています。

また、我々が効果的な対話を行って企業の好反応を引き出した場合に、企業の行動変容の割合が相対 的に高かったという結果も出ておりまして、それは我々の活動方針として良かったかなと考えています。

関岡 泰之

石井さん、貴重なご意見をありがとうございました。

それでは最後に、日本生命さんが考えるスチュワードシップについて、今後の活動の方向性、取り組みの方向性についてお聞かせ願えますでしょうか。

石井 智親

企業が自ら変化の必要性を認識して自ら変わっていただく、これが持続的な企業価値向上の観点か らは望ましい姿と我々は考えています。昨今、日本のコーポレートガバナンス改革の議論の中で、企業の持続的な稼ぐ力の向上というのが言われていますが、そのために我々として企業に要望していき、その要望というのは、恐らく3年から5年を超える期間を経て達成されるものも多いと考えています。そういう中で、我々としては、しっかりと長期の視点に立った機関投資家として、企業にしっかりと 要望しつつ、企業の取り組みの後押しをしていきたいと考えております。

関岡 泰之

よくわかりました。石井さん、今日はどうもありがとうございました。 

石井 智親

ありがとうございました。 

関岡 泰之

本日はご視聴いただきましてありがとうございました 。

本内容につきましては、オリバー・ワイマンのLinkedInにて確認していただければと思います。オリバー・ワイマンのLinkedInをフォローいただければと思います。

    生成AIは、機関投資家のスチュワードシップやコ ーポレートガバナンスの取り組み方を変えつつある。日本生命では、生成AIを活用して700社超の投資先に 対するスチュワードシップ・エンゲージメントの品 質や効果を分析している。投資先との対話の品質を 分析することで、時間をかけて企業の行動に実質的 な変化をもたらす取り組みを進めている。

    今回の対談で、オリバー・ワイマンのパートナー・関岡泰之が、日本生命保険相互会社株式部担当部長         (CFA協会認定証券アナリスト)の石井智親氏を迎えて、スチュワードシップ活動における対話の品質 を向上させる上で、AI技術がどのように役立つかについて探った。

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    INFocusは、アジア太平洋地域の専門家やリーダー からの独占的な洞察とトレンドを提供し、この地域 の未来を形作る力、機会、課題を探る。

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    関岡 泰之

    皆さん、こんにちは。 オリバー・ワイマン東京オフィスのパートナー関岡です。 

    本日は、日本生命さんの株式部、石井智親様をお迎えいたしまして、日本生命さんのスチュワー ドシップ活動についてお話をお伺いしたいと思います。その中で、弊社のご支援についても触れ ていただければと思います。それでは石井さん、よろしくお願いいたします。 

    石井 智親

    こちらこそお招きいただきましてありがとうございます。日本生命の約10年超にわたるスチュワ ードシップ活動についてご説明させていただけること、大変ありがたく思います。 

    関岡 泰之

    石井さん、今日はよろしくお願いいたします。

    石井 智親

    よろしくお願いします。

    関岡 泰之

    それではまず、日本生命さんが過去10年超にわたって、スチュワードシップ活動についてどの ような取り組みをされてこられたか、特に、環境変化があった中でどのような対応をされてき たかについて、お伺いしたいと思います。

    石井 智親

    ここ10年で、日本では経済成長に向けて企業のガバナンス改革が進められてきました。2014年に機関投資家向けのスチュワードシップ・コード、そして、その翌年には企業向けのコ ーポレートガバナンス・コード、これを車の両輪として企業のガバナンス改革は着実に進んで きたと思います。

    こうした環境下で、我々も責任ある機関投資家として、2014年にスチュワードシップ・コード の受け入れを表明しまして、体制を強化しながら対話の質や量の強化に努めてまいりました。具体的に申し上げますと、対話の量につきましては、現在年間約700社の全国の企業と対話をし ておりまして、おそらく活動量としては日本最大級だと考えています。

    また、対話のテーマも徐々に拡大してきました。具体的には、我々、当初ガバナンスやファイ ナンスのテーマが多かったのですが、2018年頃から環境や社会といったテーマについても徐々 に拡大していったということです。

    我々の目指すところとして、「有益な対話相手として選ばれる機関投資家になりたい」というこ とを掲げています。そうした中で、我々は多くの企業と対話をしてその知見を蓄積し、そしてそ れを対話のクオリティに活かしていく。こうしたことで、活動を今後も進化させていければと考 えております。

    関岡 泰之

    ありがとうございました。日本生命さんがこれまで過去10年超にわたってスチュワードシップに 取り組んでこられました内容がよくわかりました。

    今回のオリバー・ワイマンとのプロジェクトでは、日本生命さんが過去対話を続けてきた10年超にわた るミーティングの記録を分析させていただきまして、日本生命の皆様が本当に品質の高い対話ができて いるかどうか、それが投資先の企業の皆様にとってし っかりと受け止められ ているかどうか、またその 対話を踏まえ、投資先の企業の皆様が実際行動変 容を起こして、それが実際に外から確認できる形で変 化として起こっているのかどうか、こういうことを分析して確認をしていきたいという形でお手伝いを させていただきました。

    できるだけ客観的な分析 をするという目的を掲げま して、今回生成AIを使い、生成AIにまず日本生命さ んの投資の哲学をしっか り学ばせる。次に、どういう対話がより品質の高い対話であるかどうか、それを学習させる。それで対 話記録を全て読み込ま せて、果たしてその対話が品質が高いかどうか、インパクトを生んでいるかどうか、こういうことを 分析をするというお手伝いをさせていただきました。

    今回、プロジェクトを組むにあ たって、オリバー・ワイマンに期待した点がもしございましたら、お聞かせいただけますでしょうか。

    石井 智親

    オリバー・ワイマンを今回のプロジェクトのパー トナーにしたのは、3つ理由があると思っています。

    1点目は、オリバー・ワイマンとは、過去に直近2年 スチュワードシップ領域のプロジェクトを一緒 にさせていただきまして、我々の活動内容や考え方、こういったものを深く理解いただいていたとい うことです。

    2点目は、私の目指すゴールやレベル感といったも のを、このプロジェクトの構想前の段階から共有で きていたなということを感じたことです。

    3点目は、このプロジェクト、本当に我々にとっても チャレンジングな取り組みだったということで、おそらくきっと何度も壁にぶち当たるだろうなと思っていました。そういった中で、オリバー・ワイマン にはおそらく適切な有益なソリューションを提供いただけるのではないかという期待があった。その3つ が理由でございます。

    今回、まさにそういう期待に応えていただいた。い や、 むしろ期待を超えていただいた事例が2つある か なと思っていますので、それを紹介したいと思います。

    1点目が、先程、関岡さんもおっしゃってい ました、対話のクオリティの分析。これが最も時間をかけた ところになります。この作業は何かというと、生成 AIに効果的な対話は何かというのを、我々の方で定 義をしまして、それを生成AIに学習・指示をさせ ることで、我々の対話記録8,830件について、適切に 対話のクオリティを判定させる作業です。ですので、学習やプロンプトがとても重要になるのですが、最 初300件のサンプルを用いて、トライ・アンド・エラー を行いました。トライ・アンド・エラーをやると、生成AIというのは、文脈 を理解する力にとても優れて いる一方で、それが逆に我々の発言内容を良いよう に解釈して しまう、ということもありまして、こうい ったものをサンプルチェックの段階 で除くなどの 作業を行いました。最終的には、プロンプトの内容がA4紙 で大体10枚ぐら いの分量になりま した。その時もオ リバー・ワイマン様にはとても有益なソリューション を提供いただけたと 考えています。

    2点目は、企業の行動変容を生成AIに判定させるという作業についてです。手順としては簡単に見えるかも しれないですが、我々、投資先企業に様々なことを要望しています。例えば、財務面の定量的な要望です とか、もしくは、開示充実といった定性的な要望、このような色々なものを要望しています。そうした中 で、これをシステムでどうやるのかというところで、生成AIに1万件を超える要望事項を着実に読み取らせ て、それを定量または定性に分類して、定量面では財務データ、定性面では有価証券報告書や統合報告書と いったディスクロージャー資料、これを予めシステム環境の中に格納しておくことで、要望事項とそのシス テムのデータと突合し、資料や財務データの変化を生成AIに判定させています。オリバー・ワイマンにこう いうことをやってくださいと提案しましたが、正直、生成AIがここまでしっかり判定してくれるのかな、と いうのは半信半疑でした。それを見事にそういうシステム環境を構築して、しっかりと判定するようなこと をやっていただいたのは本当に驚きました。ありがとうございました。 

    関岡 泰之

    今回のプロジェクトを通じて、今までの日本生命さんにおけるスチュワードシップ活動、過去10年超に わたってやってこられたわけですが、何か新たな気づきとか新しい発見とか、そういうものがありまし たらお聞かせ願えますでしょうか。

    石井 智親

    今回の分析で、対話のクオリティとか企業の反応といったものが、良かったと判定された割合が年々高 まっていたのは良かったと考えています。

    ただ、想定していたことではありましたが、テーマごとに差がありまして、例えば財務面のテーマの 対話ですと、相対的に「High」 「良かった」 「効果的だった」 という割合が高くて、環境や社会と いったテーマは相対的に低かったです。我々、対話担当者が年間約100件弱の企業を担当しています。そうした中で、効果的な対話の割合を今後上げていくために、どのような活動のあり方を模索してい くべきかということは、今後検討していく必要があるなということを感じました。

    また、企業の行動変容については、企業の行動変容があったという割合は年々増えていっているとい う結果が出ています。ただ、これは我々の対話の効果だけであるということを主張するものではなく、おそらく企業は様々な影響を受けています。例えば政策、他の機関投資家からの要望、企業の自助努 力など、様々な影響を受けている中で、我々の要望事項と企業の行動変容の方向性が概ね一致した結 果と捉えています。

    また、我々が効果的な対話を行って企業の好反応を引き出した場合に、企業の行動変容の割合が相対 的に高かったという結果も出ておりまして、それは我々の活動方針として良かったかなと考えています。

    関岡 泰之

    石井さん、貴重なご意見をありがとうございました。

    それでは最後に、日本生命さんが考えるスチュワードシップについて、今後の活動の方向性、取り組みの方向性についてお聞かせ願えますでしょうか。

    石井 智親

    企業が自ら変化の必要性を認識して自ら変わっていただく、これが持続的な企業価値向上の観点か らは望ましい姿と我々は考えています。昨今、日本のコーポレートガバナンス改革の議論の中で、企業の持続的な稼ぐ力の向上というのが言われていますが、そのために我々として企業に要望していき、その要望というのは、恐らく3年から5年を超える期間を経て達成されるものも多いと考えています。そういう中で、我々としては、しっかりと長期の視点に立った機関投資家として、企業にしっかりと 要望しつつ、企業の取り組みの後押しをしていきたいと考えております。

    関岡 泰之

    よくわかりました。石井さん、今日はどうもありがとうございました。 

    石井 智親

    ありがとうございました。 

    関岡 泰之

    本日はご視聴いただきましてありがとうございました 。

    本内容につきましては、オリバー・ワイマンのLinkedInにて確認していただければと思います。オリバー・ワイマンのLinkedInをフォローいただければと思います。

    生成AIは、機関投資家のスチュワードシップやコ ーポレートガバナンスの取り組み方を変えつつある。日本生命では、生成AIを活用して700社超の投資先に 対するスチュワードシップ・エンゲージメントの品 質や効果を分析している。投資先との対話の品質を 分析することで、時間をかけて企業の行動に実質的 な変化をもたらす取り組みを進めている。

    今回の対談で、オリバー・ワイマンのパートナー・関岡泰之が、日本生命保険相互会社株式部担当部長         (CFA協会認定証券アナリスト)の石井智親氏を迎えて、スチュワードシップ活動における対話の品質 を向上させる上で、AI技術がどのように役立つかについて探った。

    INFocusシリーズ

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    シリーズ(英語)

    関岡 泰之

    皆さん、こんにちは。 オリバー・ワイマン東京オフィスのパートナー関岡です。 

    本日は、日本生命さんの株式部、石井智親様をお迎えいたしまして、日本生命さんのスチュワー ドシップ活動についてお話をお伺いしたいと思います。その中で、弊社のご支援についても触れ ていただければと思います。それでは石井さん、よろしくお願いいたします。 

    石井 智親

    こちらこそお招きいただきましてありがとうございます。日本生命の約10年超にわたるスチュワ ードシップ活動についてご説明させていただけること、大変ありがたく思います。 

    関岡 泰之

    石井さん、今日はよろしくお願いいたします。

    石井 智親

    よろしくお願いします。

    関岡 泰之

    それではまず、日本生命さんが過去10年超にわたって、スチュワードシップ活動についてどの ような取り組みをされてこられたか、特に、環境変化があった中でどのような対応をされてき たかについて、お伺いしたいと思います。

    石井 智親

    ここ10年で、日本では経済成長に向けて企業のガバナンス改革が進められてきました。2014年に機関投資家向けのスチュワードシップ・コード、そして、その翌年には企業向けのコ ーポレートガバナンス・コード、これを車の両輪として企業のガバナンス改革は着実に進んで きたと思います。

    こうした環境下で、我々も責任ある機関投資家として、2014年にスチュワードシップ・コード の受け入れを表明しまして、体制を強化しながら対話の質や量の強化に努めてまいりました。具体的に申し上げますと、対話の量につきましては、現在年間約700社の全国の企業と対話をし ておりまして、おそらく活動量としては日本最大級だと考えています。

    また、対話のテーマも徐々に拡大してきました。具体的には、我々、当初ガバナンスやファイ ナンスのテーマが多かったのですが、2018年頃から環境や社会といったテーマについても徐々 に拡大していったということです。

    我々の目指すところとして、「有益な対話相手として選ばれる機関投資家になりたい」というこ とを掲げています。そうした中で、我々は多くの企業と対話をしてその知見を蓄積し、そしてそ れを対話のクオリティに活かしていく。こうしたことで、活動を今後も進化させていければと考 えております。

    関岡 泰之

    ありがとうございました。日本生命さんがこれまで過去10年超にわたってスチュワードシップに 取り組んでこられました内容がよくわかりました。

    今回のオリバー・ワイマンとのプロジェクトでは、日本生命さんが過去対話を続けてきた10年超にわた るミーティングの記録を分析させていただきまして、日本生命の皆様が本当に品質の高い対話ができて いるかどうか、それが投資先の企業の皆様にとってし っかりと受け止められ ているかどうか、またその 対話を踏まえ、投資先の企業の皆様が実際行動変 容を起こして、それが実際に外から確認できる形で変 化として起こっているのかどうか、こういうことを分析して確認をしていきたいという形でお手伝いを させていただきました。

    できるだけ客観的な分析 をするという目的を掲げま して、今回生成AIを使い、生成AIにまず日本生命さ んの投資の哲学をしっか り学ばせる。次に、どういう対話がより品質の高い対話であるかどうか、それを学習させる。それで対 話記録を全て読み込ま せて、果たしてその対話が品質が高いかどうか、インパクトを生んでいるかどうか、こういうことを 分析をするというお手伝いをさせていただきました。

    今回、プロジェクトを組むにあ たって、オリバー・ワイマンに期待した点がもしございましたら、お聞かせいただけますでしょうか。

    石井 智親

    オリバー・ワイマンを今回のプロジェクトのパー トナーにしたのは、3つ理由があると思っています。

    1点目は、オリバー・ワイマンとは、過去に直近2年 スチュワードシップ領域のプロジェクトを一緒 にさせていただきまして、我々の活動内容や考え方、こういったものを深く理解いただいていたとい うことです。

    2点目は、私の目指すゴールやレベル感といったも のを、このプロジェクトの構想前の段階から共有で きていたなということを感じたことです。

    3点目は、このプロジェクト、本当に我々にとっても チャレンジングな取り組みだったということで、おそらくきっと何度も壁にぶち当たるだろうなと思っていました。そういった中で、オリバー・ワイマン にはおそらく適切な有益なソリューションを提供いただけるのではないかという期待があった。その3つ が理由でございます。

    今回、まさにそういう期待に応えていただいた。い や、 むしろ期待を超えていただいた事例が2つある か なと思っていますので、それを紹介したいと思います。

    1点目が、先程、関岡さんもおっしゃってい ました、対話のクオリティの分析。これが最も時間をかけた ところになります。この作業は何かというと、生成 AIに効果的な対話は何かというのを、我々の方で定 義をしまして、それを生成AIに学習・指示をさせ ることで、我々の対話記録8,830件について、適切に 対話のクオリティを判定させる作業です。ですので、学習やプロンプトがとても重要になるのですが、最 初300件のサンプルを用いて、トライ・アンド・エラー を行いました。トライ・アンド・エラーをやると、生成AIというのは、文脈 を理解する力にとても優れて いる一方で、それが逆に我々の発言内容を良いよう に解釈して しまう、ということもありまして、こうい ったものをサンプルチェックの段階 で除くなどの 作業を行いました。最終的には、プロンプトの内容がA4紙 で大体10枚ぐら いの分量になりま した。その時もオ リバー・ワイマン様にはとても有益なソリューション を提供いただけたと 考えています。

    2点目は、企業の行動変容を生成AIに判定させるという作業についてです。手順としては簡単に見えるかも しれないですが、我々、投資先企業に様々なことを要望しています。例えば、財務面の定量的な要望です とか、もしくは、開示充実といった定性的な要望、このような色々なものを要望しています。そうした中 で、これをシステムでどうやるのかというところで、生成AIに1万件を超える要望事項を着実に読み取らせ て、それを定量または定性に分類して、定量面では財務データ、定性面では有価証券報告書や統合報告書と いったディスクロージャー資料、これを予めシステム環境の中に格納しておくことで、要望事項とそのシス テムのデータと突合し、資料や財務データの変化を生成AIに判定させています。オリバー・ワイマンにこう いうことをやってくださいと提案しましたが、正直、生成AIがここまでしっかり判定してくれるのかな、と いうのは半信半疑でした。それを見事にそういうシステム環境を構築して、しっかりと判定するようなこと をやっていただいたのは本当に驚きました。ありがとうございました。 

    関岡 泰之

    今回のプロジェクトを通じて、今までの日本生命さんにおけるスチュワードシップ活動、過去10年超に わたってやってこられたわけですが、何か新たな気づきとか新しい発見とか、そういうものがありまし たらお聞かせ願えますでしょうか。

    石井 智親

    今回の分析で、対話のクオリティとか企業の反応といったものが、良かったと判定された割合が年々高 まっていたのは良かったと考えています。

    ただ、想定していたことではありましたが、テーマごとに差がありまして、例えば財務面のテーマの 対話ですと、相対的に「High」 「良かった」 「効果的だった」 という割合が高くて、環境や社会と いったテーマは相対的に低かったです。我々、対話担当者が年間約100件弱の企業を担当しています。そうした中で、効果的な対話の割合を今後上げていくために、どのような活動のあり方を模索してい くべきかということは、今後検討していく必要があるなということを感じました。

    また、企業の行動変容については、企業の行動変容があったという割合は年々増えていっているとい う結果が出ています。ただ、これは我々の対話の効果だけであるということを主張するものではなく、おそらく企業は様々な影響を受けています。例えば政策、他の機関投資家からの要望、企業の自助努 力など、様々な影響を受けている中で、我々の要望事項と企業の行動変容の方向性が概ね一致した結 果と捉えています。

    また、我々が効果的な対話を行って企業の好反応を引き出した場合に、企業の行動変容の割合が相対 的に高かったという結果も出ておりまして、それは我々の活動方針として良かったかなと考えています。

    関岡 泰之

    石井さん、貴重なご意見をありがとうございました。

    それでは最後に、日本生命さんが考えるスチュワードシップについて、今後の活動の方向性、取り組みの方向性についてお聞かせ願えますでしょうか。

    石井 智親

    企業が自ら変化の必要性を認識して自ら変わっていただく、これが持続的な企業価値向上の観点か らは望ましい姿と我々は考えています。昨今、日本のコーポレートガバナンス改革の議論の中で、企業の持続的な稼ぐ力の向上というのが言われていますが、そのために我々として企業に要望していき、その要望というのは、恐らく3年から5年を超える期間を経て達成されるものも多いと考えています。そういう中で、我々としては、しっかりと長期の視点に立った機関投資家として、企業にしっかりと 要望しつつ、企業の取り組みの後押しをしていきたいと考えております。

    関岡 泰之

    よくわかりました。石井さん、今日はどうもありがとうございました。 

    石井 智親

    ありがとうございました。 

    関岡 泰之

    本日はご視聴いただきましてありがとうございました 。

    本内容につきましては、オリバー・ワイマンのLinkedInにて確認していただければと思います。オリバー・ワイマンのLinkedInをフォローいただければと思います。